「江戸川乱歩と東京古典会」

小林書房 小林 光寿


 来る10月2日(日)・3日(月)に、東京古典会創立100周年記念 「和本シンポジウム」が、東京古書会館にて行われます。とにかく 「和本」にスポットを当てたイベントで、地下ホールでは慶應大学 ・立教大学・東京古典会がコラボし実現した貴重書展が、2Fでは 浮世絵版画の摺りの実演が、そして7FではTV等でも活躍中の、東 京大学大学院教授ロバート・キャンベル氏と、直木賞作家木内昇氏 のトークライブが行われます。

 その中でも、立教大学の協力で行われる地下ホールの貴重書展「 江戸川乱歩と東京古典会―購入記録にみる和本蒐集の軌跡」をご紹 介いたします。

 江戸川乱歩―今なお多くのファンを持つ昭和を代表する探偵小説 家ですが、和本の蔵書家でもあった事はあまり世間には知られてい ないかもしれません。「仮名草子、浮世草子、八文字屋本などが主 で、西鶴の小説のめぼしいものはほとんどそろっている。その他日 本、中国の怪談書、探偵小説の先祖である裁判物語など。ほかに江 戸末期の草双紙がどっさりある」(『読売新聞』昭和29年2月7日) という乱歩の900点を超える和本コレクションは、幻影城と命名さ れた土蔵の中に収められていました(現在は立教大学蔵)。そして、 このコレクションの最大の特徴は、蔵書の1点1点に詳細な購入記 録が残されており、乱歩直筆の「和本カード」として保存されてい る事でした。

 今回の展覧会では、蔵書と「和本カード」をセットで展示し、そ の購入記録から当時の乱歩の和本蒐集の足跡を追ってみようという 試みがされております。しかも、購入記録から判別する購入先は、 OB及び現役の東京古典会会員がほとんどでした。「弘文荘」「木内 書店」といったOB会員から、「浅倉屋書店」「琳琅閣書店」といっ た現役会員の店舗名が、蔵書の購入金額と共に「和本カード」に記 されているのです。東京古典会の歴史に、生の資料で直に触れる事 ができる、まさに創立100周年記念イベントにふさわしい展覧会と いえるでしょう。

その他、前述のとおり「和本」尽くしのイベントが目白押しの二日 間です。入場は無料となっております。
「和本シンポジウム」、是非ご来場ください!


東京古典会
http://www.koten-kai.jp/


 


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