『週刊読書人』

編集長 明石 健五


『週刊読書人』は昭和33年(長嶋茂雄が巨人軍に入団した年、あるいは東京タワーが竣工された年として記憶される)に創刊された、今年で53年目を迎える書評新聞である。この8月には2900号を迎えた。創刊号の1面には、作家・佐藤春夫が「批評精神を刺激する批評を」というタイトルで原稿を寄せている。現在も新聞の形態は変わらず、毎週8頁立て(秋の読書週間や年末などには増頁となる)、書評面は「学術思想」「文学芸術」「読物文化」の3頁にわかれ、それぞれ毎号4本の書評を掲載している。他に、横尾忠則氏の「絵画の向こう側 ぼくの内側」、椎根和氏(雑誌「Hanako!」元編集長)の「銀座を変えた雑誌Hanako!」、「田原総一朗の取材ノート」といった連載、「日本図書館協会選定図書週報」などが掲載されている。

 1・2面は通常、新刊本を上梓した著者のインタビュー、もしくは著者を交えた対談・鼎談が掲載される。新聞の1・2面をぶち抜きで記事にすると、およそ12000字(原稿用紙換算で30枚)ほどの原稿となる。おそらくこの記事を読むだけで、通常の人であれば、1時間以上かかるのではないか。日刊紙や他の週刊誌では読むことのできない、読み応え充分の話である。哲学・思想、文学、歴史、宗教、ノンフィクション……かなりバラエティに富んだ企画が毎週展開されている。 今年の1月からのラインナップは、東浩紀、平野啓一郎、森達也、金平茂紀、久世朋子、近田春夫、國分功一郎、萱野稔人、渡邊美樹、小谷野敦、石牟礼道子、椎根和、鈴木邦男、山室信一、岡田暁生、小関隆、立花隆、佐野衛、西山雄二、鵜飼哲、堀江貴文、猪瀬直樹、上杉隆、村山斉、泉麻人、山田五郎、島田裕巳、伊高浩昭、柳原孝敦、島田雅彦、奥泉光、石井公太、柄谷行人、和合亮一、田原総一朗、姜尚中、佐野眞一、バルガス=リョサ、幅允孝、上野千鶴子、森彰英、松井今朝子、岡崎武志、堀江敏幸、開沼博、古市憲寿、中森明夫、宇野常寛、鬼海弘雄、角幡唯介、辻村深月、斎藤貴男、武田徹(敬称略)。このメルマガを読んでいるのは(古)本好きの方がほとんどだと思うので、何かしら引っかかる人がいたのではないか。

 次に、書評面について記しておく。毎週、数百冊の本が、著者・編者・出版社から恵贈される。我々編集者が独自に本屋で買い求めた本が、それにプラスされて、週に一度編集会議が開かれる。すべての本のタイトルと著者、版元を読み上げ、この会議の段階で、「書評で取り上げるべき本」が、大まかに選別される。そこから各面担当者(私の場合、「学術思想」欄担当)が最終的に評者を決め、書評を依頼することになる。

 現在、日本の新刊点数は7万点を越えている。『読書人』で紹介できるのは、そのうちほんの一握りの本である(1面企画の1冊と各書評面4冊×3=13冊。年間だと650冊ほど)。しかし、この紙面には、厳選に厳選を重ねられた、珠玉の1冊が並んでいる。まずは1面で取り上げられた本を、その週に読んでみる。そして、各書評面から1冊ずつ気になった本を読んでみる。それだけで各週4冊、年間約200冊もの本を読むことになる。あるいは、インタビューや対談を読んで興味を持てば、その著者の過去の本を読んでみるのもいい。現在の読書体験が、格段に豊かになることだけは確約する。

 まずは一度、『週刊読書人』を手にとっていただければ、幸いである(個人名でtwitterでも呟いています。ほぼ9割方仕事の話〔気になった新刊本、企画の進行状況、書評掲載予定の本、参加したシンポジウムや講演会の実況など〕なので、そちらもフォローいただければ、参考になると思います〔アカウント名=kengoa1965〕)。

(明石健五 『週刊読書人』編集長)
『週刊読書人』
http://www.dokushojin.co.jp/

 


Copyright (c) 2011 東京都古書籍商業協同組合