『必携 古典籍・古文書料紙事典』発刊の背景

宍倉ペーパー・ラボ/繊維分析研究者 宍倉佐敏


5年程前に印刷朝陽会より『和紙の歴史−製法と原材料の変遷−』を刊行しました。お陰さまで多くの人に購読して頂き有難うございました。

 ある日、八木書店の編集者より電話があり「『和紙の歴史』を読みました。失礼ですが、この著書は編集者がいますか」と質問され、「これは自分が企画して、過去に寄稿をした文章を書き改めたものです」と返事をしました。「もう一度和紙の本を書きませんか」と言われたが、本の出版などこりごりだと思っていましたのでお断りしました。その時、いつか上京する機会があったらお会いしたいと言われ、数日後東京で話を聞いてみると、「本の編集は全て私がやります、宍倉さんは私の指示に従って文章を書いてくれればよい、全て私にお任せ下さい」と言われ、もう一度和紙の本を書く決心をしました。

 編集者は約束通り本の出版のために、過去の私の文献なども細かく読み、沼津の田舎にも再三足を運んで頂きました。その結果、自分でも想像できない立派な本を出版させて頂きました。心から感謝しております。
 この本は、元宮内庁書陵部修補師長の吉野敏武様や明治大学の渡辺滋様など編集協力を頂いた方々の応援と、料紙に関心のある多分野のコラム執筆者の御協力によって完成したと考えています。

 独学に近い紙の繊維分析の方法と、植物繊維の研究の重要さとが認知され、繊維分析を学ぼうとする人々が生まれつつある現実に喜びを感じています。
 私は現在「晴耕雨読」を生活の基本として、晴天は畑で野菜を作り、雨天は紙に関する植物繊維を「日々努力・日々感動」をモットーにして、ささやかに勉強しています。

 
『必携 古典籍・古文書料紙事典』 宍倉佐敏著
(八木書店 定価10,500円(本体10,000円+税5%)好評発売中!
    http://www.books-yagi.co.jp/pub/index.htm



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