『貧乏暇あり 札幌古本屋日記』

須賀章雅


「札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます」という端書きのあるブログ日記を書き始めたのが、もう八年前のことです。このブログが奇特な(実は目利きと信じているのですが)編集者さんの目に留まり、この度書籍化されたのが本書でございます。

 中身は2005年から2011年に亘る日録。この間に書かれた日記がほぼ2150日分あり、そこから約14分の1の155日分を選んで、修正、補筆の上、七年間の私の人生をぎゅっと絞り込んで335頁に詰め込み、お買い得な一冊に仕上げました。出来上がってみると、悔恨と貧困、回想と妄想に彩られた、危うい綱渡りの、だが、ゆるーい日常を綴った赤裸々な古本屋長篇ドキュメントになったのでは、と思っております。  古本屋と申しましても、十数年前に実店舗を撤退した後は通販専門となり、アルバイトをしながら食い繋ぎ、今日まで奇跡的に生き延びて来た次第です。

 札幌の業者市場、古本市、お客さん宅の蔵書整理など、自分と自分の周囲の古本屋事情のみを記述してきたつもりですが、発売約二ヶ月が経過し、思いがけなくも、いくつかご感想も寄せられております。「家中が本だらけで押し入れに寝かせられている奥さんが気の毒」、「『うどん、ナットウ、冷水、ミニあんパン、カフェオレ』などという奇怪な食生活」、「古書業者の交換会(市場)の様子や古本屋経営がリアルに描かれている」、「冒頭から爆笑の連続」、「古書業界の実態とそこでもがく古本屋さんたちの姿が描かれていますね」、「古書業界の流れ行く風景をスナップ写真を撮り続けるように記している」などなど、ほお、そうでっか、と誰か他の人が書いた本への反応のように感心しております。

 ちなみに、取材をして頂いた新聞記者さんに「この本で一番訴えたかったことはなんですか?」と真顔で訊かれて、「は?」と言葉に詰まりました。そんなだいそれたモノはないのです。こんなバカな男でも生きているのだなあ、と笑って楽しく読んで頂ければ嬉しいのですから。  ただでさえ恥ずかしい内容であるのに、恥の上塗りの「まえがき」「登場する古本屋さんたち(一覧)」「書庫兼自宅の間取図」「あとがき」も入っております。まずは書店でお手にとられて、「まえがき」を覗いて頂けたらありがたく存じます。


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 『貧乏暇あり―札幌古本屋日記 』 須賀 章雅著
 (論創社 価格:1,890円(税込))好評発売中!
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