ネットでは検索不能な書誌の世界の整備を行う「文圃文献類従」普及のために――1999年『文献継承』創刊

田川浩之


『文献継承』は、書誌・出版史に関する記事を掲載した片々たるリーフレットです。これまで書店に陳列されることもなく、でももうまもなく23号が発行されます。 そもそも『文献継承』は、天野敬太郎編『雑誌新聞文献事典』(小閣、1999年9月)の内容見本(1999年7月)とともに4頁の体裁ではじめて刊行しました。

小閣は、石川県金沢市に存在しますため、なかなかに大都市の大学・図書館に直接に新刊出版物の営業活動をすることもままなりません。『文献継承』を刊行したその訳は、営業・普及活動の一助になればとの思いからでした。 「書誌・情報学からの提案・ノート・随筆等の文章を、僅かなスペースではありますが、読者の皆様にお届け」すると宣言し、新刊内容見本を発行の都度、少しでもそのパンフレットを見てもらえるようにとの営業・普及補助ツールとの位置づけにてうまれたという訳です。

新刊出版物は、日本の近代における書誌/出版/書物メディア文化史に関する資料をその内容とし、ネットでは検索不能な部分の整備を行うシリーズ「文圃文献類従」として、最初の出版物、上記『雑誌新聞文献事典』を刊行しました。 その刊行に先立って、内容見本を作成し、全国の大学・公共図書館、歴史・社会・図書館学研究者の方々に、この『文献継承』とともにご案内申し上げました。

歴史研究に雑誌が資料として活用されるちょうどとば口だったのか、本の内容がよかったのか、タイトルがよかったのか、『文献継承』の効果もあったのか、『雑誌新聞文献事典』は300部を売切り、それ以後「重版未定品切中」。 それから14年。『雑誌新聞文献事典』は重版されないまま、只今もその状態、『文献継承』は22号まで継続刊行することができ、頁数も当初の4倍16頁になりました。しかし、肝心の新刊出版物の発行部数は、例えば天野敬太郎ほか編『日本図書館史年表―弥生時代〜1959年』(2012年)では136部で、『雑誌新聞文献事典』の半分以下。

一タイトルあたりの売上は半分以下に減少しているが、『文献継承』にご寄稿いただける方が、当初の4倍に増えた(?)と考えたい。片々たる葉っぱ『文献継承』があるおかげで、執筆者が4倍に増え、遠い将来、読者・「文圃文献類従」利用者の方々とも4倍のご縁ができるかもしれない。

わずかな人びとの支持と大勢の無関心の間で本日もゆれながら、『文献継承』23号は、今月末に発行される。十四年間の軌跡いわゆる総目次・バックナンバーは、
http://kanazawa-bumpo-kaku.jimdo.com/文献継承-20号記念/
 にて公開しておりますので、ご高覧ください。

金沢文圃閣 田川 浩之



   金沢文圃閣 
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