本音と建前

高島 利行(語研/版元ドットコム有限責任事業組合 組合員)

版元ドットコムでは先日から品切・重版未定や絶版の書籍について「日本の古本屋」へのリンクを設定しています。同時に図書館検索のカーリルにもリンクするようにしました。実際の例は版元ドットコムで探してみてください。現在191社の出版社が書誌情報を提供しています。けっこう面白い本ありますよ。

『男でも女でもない性 インターセックス(半陰陽)を生きる』 青弓社
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-7872-3155-0.html

『暴走列島80 全日本暴走族グラフティ』 第三書館
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-8074-7903-0.html

『スリ その技術と生活』 青弓社
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-7872-3101-7.html

『陸軍登戸研究所の真実』 芙蓉書房出版
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-8295-0275-4.html

版元ドットコムでは元々「手に入らないという情報にも意味がある」と考え、品切・重版未定や絶版書籍の情報も積極的に公開してきました。実は、品切・重版未定や絶版の書籍については以前から復刊ドットコムへのリンクを設定しています。出版社に在庫が無い本についてどれぐらいニーズがあるかわかりませんが、どうしても読みたいのに出版社にも在庫が無くて手に入れられないという読者の復刊リクエストにお応えするためです。

で、考えてみると、「どうしても読みたい」読者は、復刊ではなく図書館で借りても古書店で入手してもいいわけですよね。いや、むしろ「どうしても読みたい」読者は昔からそうしていました。大人しく出版社の復刻版や新版を待っていたわけではありません。

出版社で働く人間にとって「作った本は売れて欲しい」のが本音です。「図書館で借りられたり古書店で買われては売れる本も売れなくなってしまう」という声もあります。古書で流通していなければ買うのかという問題は別として、実際問題としてそういう声は少なくないです。

一方、「作った本はより多くの人に読んでもらいたい」というのも出版社で働く人間にとっての偽らざる本音です。いや、建前かもしれません。やっぱり本音かも。建前か。どっちでもいいのですが、本が売れないと、かなり悲しいです。売れなかった本を断裁するのは常に心苦しいです。断裁するぐらいなら古書として販売、とは思います。そういう形で徐々に古書の業界と出版社はつながり始めています。

「買って読んでね」は、出版社が増刷を重ね在庫を持っているうちは全然問題ないんですよ。でも、在庫がなくなると売れません。当たり前ですが「読みたい」に応えることもできません。

そこで、「品切・重版未定や絶版の書籍からの古書店・図書館へのリンク」なんです。

これが、どれくらいのニーズに応えられるのかは分かりませんが、出版社と古書店・図書館とが読者のニーズに応えるためにできることの新しい一歩となれば幸いです。

最後にもうひとつポロッと本音を。ネットのリンクでアフィリエイトという仕組みがあるじゃないですか、将来的にはあれであわよくば古書の販売や図書の貸出から少しでも……、無理か……。


版元ドットコムについて
高島 利行(語研/版元ドットコム有限責任事業組合 組合員)
http://www.hanmoto.com



Copyright (c) 2013 東京都古書籍商業協同組合