「即売展の魅力を語る」

相原弼徳

即売展とは何だろうか。本の需要が減少している中で、毎週末の金、土、日に神田 五反田、高円寺の古書会館で開催されている古書の即売会である。店主は自分が出展する即売展に自慢の古書を大量に出展する。出展する古書を見れば店主の意気込みがうかがえる。何故か。この本が、あの本が、こんなにも安く買えるのかという読者からすれば感嘆するばかりなのである。では、どんな古書が実在するのか。ジャンルは多種多様で歴史、文学、郷土史、風俗と何でも揃っているのである。

また、古書だけではなく昭和の匂いしみ込んだ黒電話、生活雑貨など21世紀とは思えないタイムスリップしたような感覚になってしまう品々が古書と同様に出展しているのである。古書という、この2文字から想像するのは古く汚い本を思い浮かべると思う次第である。

しかし、本の装丁、表紙の絵、紙質、現代の先端技術では表現できないほどの美しさと洗練さがあるのです。また紙の匂いに高揚感を覚える人もいるかもしれない。紙には匂いを吸収する力があり本が時代とともに歩んできた哀愁と人間の嗅覚を刺激する記憶の産物なのである。著名な著者が、その時代に出版した本は字体、紙質が当時のままであり現在、販売されている著名な文庫で読むより一層、読者と著者が近ずいて会話ができるのが古書の魅力であると考える。

ここで視座を変えてみよう。

即売展の本を探しにくる人々の様子も興味深いのである。即売展の開館時間は朝10時からにもかかわらず9時から行列をつくり再度、目録を点検する収集家は傍から見れば異様な光景にうつるかもしれない。開館すると我先にと会館の中を走りエネルギーを発散する。これが若い人ではなく高齢者なのある。まさか即売展で高齢者の実態が観察できるとは驚きなのである。そして誠に残念なことは若い人の来館する人数が少なく元気がないことである。即売展に来館する人は本を介在して友人作りの交流の場所としているのではないかと考える。

また人間(生物学的)は本能もしくは欲なしには生きていけない存在なのかもしれない。これらの先天的遺伝子が単に有利に作用する事が老人の元気の源ではないかと推察する。本を探している時でも人間の性格は違うもので本の状態を詳細かつ大事に調べる人がいれば内容のみを吟味する人もいて赤ん坊をあやす様でとても興味深いのである。そして店内は混雑し目的の本を獲得するため一触即発になることもあり戦々恐々の雰囲気である。そのため、これを避けるためにも2日目に来館する事が良い方法ではないかと思う。この雰囲気からもうかがえると思うが、それぐらい即売展では多くの人間ドラマと珍本が同時に得られる最高の舞台ではないでしょうか。

話は前後するが即売展では目録という物があり、これは即売展の2週間ぐらい前に送付される。この目録だけを見るのも自分の知的好奇心を拡張させてくれ未知の分野に足を踏み入れる機会を与えてくれる。しかし目録を見たら最後、絶対に行ってみたいという衝動に駆られるので注意(覚悟)が必要かもしれない。それぐらい毎回の即売展では多くの種類の古書が出品し、日本の出版文化には目を見張るものがあり世界に誇れる文化ではないかと考えています。 以上の事から、電子書籍が流通し画一化された社会の今日、人間味あふれる即売展と著者とより近くで対話できる古書の世界に一歩踏み込んでみるのも今の時代だからこそ必要なことではないでしょうか。

H.A生

追伸:小生は医学部の教育に40数年勤務してきた関係で気象と疾病(生気象学的)及び社会環境と犯罪および自殺の研究、入浴中の事故死などについて研究してきた関係の書籍があれば御知らせいただければ御幸甚である。 息子は英語に興味がありTOEIC(990点満点)を取れる書籍を探しています。そこで、何か良い書籍があれば御推奨していただければ光栄です。


   


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