小さな雑誌だから何でもできる

北尾トロ

ぼくが編集人となって2010年の秋に創刊したノンフィクション専門誌『季刊レポ』は、ジャーナリズム系の堅い雑誌ではなく、体験ベースで肩の凝らない原稿を毎号80ページ満載している雑誌です。雑誌が売れ行き不振の今、自分が好んで書いてきた「読んでも役に立たないけどおもしろい」ノンフィクション記事を掲載する媒体はめっきり少なくなりました。ただでさえ経費持ちだしがあたり前なのに、発表の場までなくなったらノンフィクションライターをやろうなんて人間はいなくなる。だったら自分で雑誌を作り、「読んでも役に立たないけどおもしろい」原稿を集めて載せよう。創刊の動機は単純なものでした。

 インディーズ雑誌の壁は流通です。ぼくが考えたのは、書店は置きたい店だけに扱っていただき、通販メインで年間購読者を募るというものでした。読者の手元に直接届く、手紙のような雑誌にしたかったのです。年4回の発行なので、年間購読者の特典として、雑誌が発行されない月には「ちびレポ」という手書きコピーの手紙を実際に送っています。直販で売ってくれる書店や単号販売を合わせ、発行部数は1000〜1200部。もう存在そのものがレアな雑誌なんです。

 でも、やってみたらおもしろいことが起きました。書く場を求める若手ライターだけではなく、えのきどいちろう、本橋信宏、平松洋子など、第一線の書き手が参加してくれる。月に一度の発送作業を手伝ってくれる執筆者がたくさんきて、プロアマ問わず勝手に交流。まるで部室にように編集部が使われ始めたんです雑誌の宣伝のために始めた週一のユーストリーム番組「レポTV」は全員ノーギャラなのに4年目に突入しました。番組放送中に突如話題になり、それがきっかけで雑誌で組んだ特集が河出書房新社の目にとまり、「愛の山田うどん」「みんなの山田うどん」という本まで誕生。特集や連載の書籍化計画も進んでいます。、そうこうしているうちにスポンサーまでつき、赤字だった財政面にも目処がつきました。

 ぼくはこれ、小さなメディアだからこそ起きた現象だと思います。あいつは放っておくと何やらかすかわからないけど、おもしろいから付き合ってやろう。そんな気持ちで支えてくれる読者のおかげで、のびのびと活動できている気がします。

 最新号の15号の特集は「犯罪者たち」。犯罪者、冤罪被害者、傍聴マニに執筆依頼し、熱度のある誌面ができました。こんな雑誌は他にないし、ぼくはこういうのが作りたかったんです。皆さん、ぜひご一読ください。

(購読申込先)季刊レポ公式サイト
 http://www.repo-zine.com/


『季刊レポ』15号 特集犯罪者たち
定価:1050円(税込) 好評発売中
http://www.repo-zine.com/archives/10704



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