−日本古書通信−
掲載記事
(平成18年4月号)

 

  渋谷繁華街で再生
       ・フライングブックス

渋谷・古書サンエー
山路 茂
http://www.kosho.ne.jp/~sanei/

 

 戦後昭和22年に渋谷で創業、昭和47年渋谷古書センターを創立、平成15年には、長男(三代目)がフライングブックス(ブック・カフェ&イベントスペース)を仲間の協力を得て、手づくりで改装開店した。以上が当店の60年間の簡単なながれである。
 フライングブックス誕生は店の売り上げ低迷や人材の老齢化等の理由に加え、数年前から長男の計画を聞かされていた。折りしもセンター最後のテナント古書店ふづき書店さんが退店を申し入れてきたので、スムーズに実現に到った。不景気が思い切らせたとも言える。
 渋谷東急プラザの裏手にある当店の立地は、駅にも近いし、良い場所とされてきた。確かに悪い場所ではない。しかし、なかなか難しい場所とも言われ続けてきた。何人も居た同級生の家(店舗)もほとんどなくなってしまった。わずかにテナントビルとして一、二軒残るだけだ。店売りは地域と店主の主張なり、こだわりがマッチすることで成り立つのかもしれない。しかしマッチするのではなく、店主の方からアピールして、お客様にそれを喜んでいただく、それで商売を成り立たせる方法もある。継続した品揃等工夫も必要である。
 一応軌道に乗って3周年を向かえたフライングブックス。ディスプレイと店長の個人的な様々なこだわりを紹介する。
 渋谷の雑然としたエリアにある老舗の古書店ビル「渋谷古書センター」、その2階にある。階段には写真集や画集が綺麗なガラスケースにディスプレイされ、ふんわりと珈琲の香りが漂ってくる。
 古書店&カフェ、イベント開催が売りでスタートした。ポエトリー・リーディングを中心としたイベントやスプラシュ・ワーズという名前でインディペンデトな詩集の出版。「フライン・スピン・レコーズ」というブランド名でCDをリリースする。この店は3つのコンセプトで成り立っている。まず「今もこれからも新鮮な驚きや喜びを与えてくれるような〈未来のための古本〉」が集まるブックショップ。そして「旅先でもコーヒーと本があればそこは〈自分の居場所〉だ」という理由からカフェとしての機能。「渋谷の本屋という環境の中で新しいかたちでイヴントをやるというスペース。」この3つのエッセンスが「フライング・ブックス」に凝縮されている。
 洋雑誌を中心としたヴィジュアル・ブックに加え、周囲の棚には、ビートジェネレーション、精神世界、ネイティヴ・アメリカン、民俗学、音楽関係、そして詩集のコーナー等テーマ別にセレクトされている。四谷シモンの人形や建築家ライトのドローイングといったものも飾られている。イベント開催を想定して中央の2列の棚は可動式にして、定期的にポエトリー・リーディングも開いている。
 今までの主なイベントを少し紹介すると、ホワイトマンショー古本ラジオ、ジプシーナイト(スズキコージ絵本作家)、「ビートゴーズ・オン」ナナオサカキ(詩人)80才、「エグザイルス、ブックス、ナイトbP」ロバート・ハリス(作家D・J)ムロケン(室矢憲治)ドクター、セブン(詩人)他、「つまづく地球」出版記念、長沢哲夫(山尾三省等と活動した諏訪・瀬島の詩人)(ピューリッツァ賞詩人ゲーリー・スナイダー)等、ラップスポークンワーズ、小林大吾(詩人)タカツキ(WOODベース・ラップ)ビートゴーズオン火と竹の島から長沢哲夫、宮内勝典(小説家)デ・モー言葉たちとの夜猫沢エミ(歌・パーカション)沼田元気等、立体文学セッション紙芝居「ここだけ雨が降っている」第一・二話、新元良一(作家・翻訳家)山崎杉夫(イラストレイター)その他、ねじめ正一リーディング、関西出身MICの一人芝居等々、これからもこのディープなエリアで文化を発信し続け、お客様にとって新しい価値観が見つけられる様な古本屋でありたいと思っています。

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