−日本古書通信−
掲載記事
(平成18年4月号)

 

「立地条件」と言うよりも

神田・@ワンダー
鈴木 宏
http://www.atwonder.co.jp/

 

 すでに「立地条件」は古本屋にとってさほど重要ではなくなったと考えています。無論、人の濃いエリアに立地すべき事は言うまでもありません。また神田神保町や中野ブロードウェイなどの特長あるエリアも重要な立地ではあると思います。しかし「ネット販売」がここまで行き渡った今、「仕入れと基本売り上げ」の確保ができるならば「店舗」の立地は決定的な意味を持たなくなったのではないでしょうか。
 では、重要な事は何かと言えば、ネット上であれ店頭であれ、お客様にダイレクトに訴求する商品を確保し続ける事だと思います。更に言えば、お店の魅力をどのような工夫で伝えて行くかという事も重要かと思われます。
 さて、そうは言え、個々の組合員の創意工夫には限界があります。より確かな未来を拓くためには、今までと違う意味での「立地」を求める事も必要かと思います。そこで「組合」の出番です。ネット上の立地で言えば「日本の古本屋とアマゾンの合併」などが考えられます。現実の立地ならば「安定した売り上げの期待できる大きな催事場の確保」又は「多くの組合員が参加できる実験店舗の運営」などでしょうか。社会全体の「物の流れ」が変わって行く中で、古本屋の英知を集め力を合わせて対応していく事が重要なのではないかと思います。
 ここまで来て、ちょっと詰ります。協同組合の良さである「相互扶助」、「自助独立」の精神からすれば、組合自体は大きな一つの方向に進むべきではないでしょう。またこの業界の自由闊達(又は自分本位)な人間関係も捨て難い。そういった事の良さを生かしてなお「商売」から「事業」へと転換する事ができるのか、又は組合員がそんな事を求めているのか。本当に重要なのはこの事なのではないでしょうか。

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