−日本古書通信−
掲載記事
(平成18年6月号)

 

10年前とは全然ちがう

 東京大田区・古書西村文生堂
西村康樹
http://home.a07.itscom.net/bunseido/

 

 僕はキャリア13年、古本屋をやっているが、どの様な品物を集めるかという事には常に悩んでいる。ちょっと売り上げが落ちてくるとまず考えるのが、品物のセンスが悪いのでは……という事だ。当然これは言えていて、10年前と今では売れ筋が全然違う。毎年毎年、一日一日、世の中の求めるモノは少しずつだが変わっている。しかし僕らの頭の中の古本知識や商売スタイルは、そんなに小回りがきいていない。だからしばらく同じ事を繰り返していると、最初は売れた商品ややり方もだんだんとダメになっていって、結果、売り上げも落ちていくのだろう。
 そんなスランプ状態になると、売れている店が、何を売っているのかが気になりだす。ついつい他の店で売れているという品筋に、手を出したくなるのだ。しかし、僕の経験では、これが一番良くなく、ますます自分の店の品筋を混乱させていくのだ。あたり前だが、立地が違えば客筋も違うからだ。やはり地域には色があり、そこに住んでいる人にも色がある。僕はスランプになった時は、この色に素直に従う様にしてきた。常に、近所の人の店への持ち込みの本が、自分の店の新しい展開のヒントをくれてきた。まったく知らなかった、又はやらなかった世界の本が、意外と売れて、驚き、味をしめてしまうわけだ。そして、その新しい感覚の本を、市場でガンガン買って集めていくうちに店の売り上げも復活していくという事を何度も僕は繰り返してきた。もう5回くらい、店の品揃えの雰囲気はフルモデルチェンジしているんじゃないかな。
 ここまで書いてきたのは店売りの品揃えの話で、目録販売や「日本の古本屋」でのインターネットを使った古書販売の品集めは、また少々違う。店売りに関しては時代や世の中に柔軟に対応していくべきだと思っているのだが、目録の世界については、そうコロコロ変わるわけにはいかない。うちの目録を楽しみにしてくれているお客さんは、当然あるジャンルのお客さんなわけであって、突然次号の目録からジャンルが変わってしまったら困惑してしまうだろう。かといって、まったく同じ事をやり続けていても飽きられてしまうので、基本は大事にしながらも新しいテイストを取り入れていこうと心掛けている。こっちはマイナーチェンジを繰り返すという感じ。
 あと僕の店は「日本の古本屋」での販売もしているのだが、このサイトで売る品揃えが一番難しい。店で売れる様な本は他社も持っているケースが多く、かなり安くしないと動かないという値段競争だ。だから逆に他社の持っていない本で売れるものを集める努力をしないといけない。店に並べておいたら100年たっても買ってくれるお客さんと巡り合えない本でも、ネットの世界では探している人と出会える可能性があるからだ。これはお互いに大変ありがたい事だ。
 現在の古本屋は売り方、売る品物ともに、多様化してきた。今までだったら、商品としてありえなかったような本も売る事ができるようになった。本というアナログな商品を売る古本屋は、意外とデジタル時代に向いていたと最近、考える。

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