日本の古本屋


日本の古本屋メールマガジン

■■■====================================================■■

      。.:*゜・☆*゜日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
             。.:*゜・☆*その5・5月22日号・*:.☆.

================================================================
◆INDEX◆
1.古本の売り方【その2】
2. 古本屋のエッセー
【最後にイベント情報・古書店情報を掲載しています】
================================================================
さて、今回は「どんな本屋に本を売ったらよいか」である。
あなたが、どういう目的で本を売ろうとしているかによって、答えはずいぶんと違ってくる。

今夜の飲み代が欲しいのか、それとも、引越しのためにお祖父さんの蔵書を整理したいのか。

自分で買った本を売る場合は比較的簡単だろう。
内容がわかっているのだから、同じような傾向の本を扱っている本屋を探せばよいわけだ。

郊外の店ならば特定の分野の本だけしか置いていいない「専門店」というのは、まずないだろう。
しかし、専門店でなくても、ほとんどの店には得意分野というものがある。

その本屋がどういう分野に力を入れているかは、当然、品揃えを見ればわかる。そんなことは簡単だと思うだろう。

だが、棚の見方にもルールがあるのだ。

多くの店主は自慢にしたい在庫を自分の近くに置いている。
特に帳場が店の奥にある場合、もっとも重要と考えている本は、店主の居場所から手の届く範囲にあると考えて間違いない。

たとえ、分量的には店の中でほんの一部分であったとしても、質の上では、輝くひと棚があれば、それがその店の肝になる部分だ。
店主も、自信を持って査定する分野である。

とはいえ、なかなか処分したい本とぴったりの店というのも見つからないかもしれない。
そういう場合は、得意分野としてはいないけれど「不得意でもない」
本屋を探そう。

店の中に近い分野の本が置いてあれば、それについて、ちょっとした質問をしてみるとよい。
話してみれば、店主の造詣の深さもわかるだろう。
しかし、ここで計るべきは知識だけではない。知識の上では相場の低い本と知っていても、愛情や思い入れで評価してくれることもあるのだ。
(あなたに対するではない、本に対する愛だ)

店頭の「均一台」も見逃してはならない。どれでも百円や3冊で二百円といったような均一本を大量に置いている店なら、たとえ買い取れない本でも、持って帰ってください、と断る確率は低い。

それに、均一台はその店の仕入れの「残骸」である場合が多い。
たとえば、戦前の建築に関する本一冊を仕入れるために、その周辺の本を100冊買ってしまう、というようなことが、古書市場ではよくある。
店頭に並ぶ安売りの本から、店主が本当に仕入れたかった本が推理できるようになれば、本屋の客としてもうベテランである。

ところで、あなたが今売ろうとしている本は何だろうか。「キリスト教入門」というような本を、キリスト教関連の専門店に持ってゆくようなことは、避けた方がよい。
その分野の入門書などは、専門店にとってはあまってしまって困る本であることが多い。

もし、処分する本が貴重な本というほどでもないならば(実際はたいていの本がそうだ、めったにない本だから貴重なのである)、店主の後ろやガラスケースにその分野を置いている店を狙わず、真ん中あたりにさりげなく挿しているような本屋を探した方が賢明だ。

最後に。

もし、蔵書処分で、とにかく片付けて欲しいという場合でも、「お金は要らないので、全部もって行ってほしい」などとは言ってはいけない。
本屋は、本を評価して買い取ることにプライドを持っている。
片付け屋とは思っていないのだ。だから、評価できるものはできるだけ評価して、評価のあまりないものもなるべく生かしてくれ、というように言えばよい。それで、生かす可能性のあるものは生かすはずだ。


文責:bakaku:

================================================================

■古本屋のエッセー■

【記憶に残る古本屋】


渋谷宮益坂上の中村書店。詩人・黒田三郎氏に『中村書店に行った方が勉強になる』
と言わしめた書店だ。
田村七痴庵が豊かな証言資料と共に、中村書店を作った店主、故中村三千夫さんの思い出を振り返る。
古書組合内部機関誌「古書月報」掲載の記事が、ひさびさに登場!


【戻る】



(C)2003 東京都古書籍商業協同組合