日本の古本屋


日本の古本屋メールマガジン
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【日本の古本屋】は全国660書店参加、データ370万点掲載
の古書籍データベースです。
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◆INDEX◆
1.自著を語るその6・「古書店のにおい」  
2.明治古典会七夕大入札会
3.探求書コーナー再開のお知らせ
4.「古本屋が書いた本」展目録 通信販売のお知らせ
5.日本の古本屋即売展情報
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「自著を語る」コーナー、今回は角田光代さん・岡崎武志さんの
「古本道場」(ポプラ社刊)です。
本、古本屋店に対する深いこだわりと好奇心、そして愛情が満載
の1冊。
今回は、第132回直木賞を受賞された作家の角田光代さんに
「古本道場」について語っていただきました。


■古書店のにおい■

ネパールの、ポカラという町の、ダムサイドという安宿街に、一軒
の古本屋があった。旅行はいつもひとりな上、なんにも予定を決め
ていないからたいていひまで、しかもその日は雨が降っていたので、
いつもは通りすぎるだけだったその古本屋に、私は足を踏み入れた。

意外に大きな店だった。スチール棚に、乱雑に本が突っ込まれてい
る。ネパール語の本より、他国語の本のほうが多かった。
英語、フランス語、ドイツ語、それから日本語も少し。
きれいな本はほとんどなくて、紙が黄ばんでいたり表紙がすり切れ
ていたりした。店は薄暗くて、埃と紙のにおいが満ちていて、奥の
レジカウンターに、年若い店員が座って何か読んでいた。
開け放たれたドアから、ひっきりなしに雨の音が響いていた。

古本屋を存在させるのは、大量の古本でも店主の経営センスでもな
くて、その町に暮らす人なんだなと、この本屋で思った。
安宿の連なるダムサイドは、私のような旅行者が各国から集まって
いる。私のような、というのはつまり、お金はあんまりないがひま
だけはたっぷりとあり、名所や史跡巡りで一日のスケジュールが埋
まることが絶対にない、そういう人たち。
彼らは自国から数冊の本を持ってここまで旅してきて、重たくなっ
たのか所持金が心許なくなったのか、とにかく読み終えた本を売り
にくる。
それを、やっぱりこの町を訪れた、似たような旅行者が買っていく。
ポカラの古本屋を存在させているのは、幾多のそういった旅行者た
ちなのである。

そう考えると、棚に押しこまれた本たちが、ちっともきれいでない
ことがなんだか好ましかった。それらの本は、表紙が反り返るくら
い、隅がすり切れるくらい、だれかに読みつがれてここにある。
この店が扱っているものは、単に古本という物質ではなくて、読ん
だ人の記憶であり時間であり「読まれた」ものとしての物語である、
と私は思った。

この雨の日に、私はエイミ・タンのペイパーバックを一冊買った。
安宿のロビーで、雨の音を聞きながら読んだ。英語はさほど得意で
はないが、不思議なことにこのときは、まったくつっかえることな
く読み続けることができた。夢中でページをめくり、目が疲れては
顔を上げ、窓の外の雨を眺めた。ポカラに滞在中、私はその本を読
み終えてしまった。
ペイパーバックを読み通すことなんてめったにない私が読み終えら
れたのはこの本を読んできた幾多の旅行者たちの記憶に後押しされ
たからかもしれない、なんて本気で考えた。

「古本道場」の連載中、岡崎武志師匠の指令のもと、いろんな町の
いろんな古本屋にいった。ポカラと同じく、一軒の店を存在させて
いるのはそこに暮らす人々、その店に出入りする人々なんだなあ、
と毎回思った。それぞれ佇まいも品揃えも異なる店に三十分もいれ
ば、なんとなく、その町の個性や、その店を利用する客たちの雰囲
気が、店内からあふれるように伝わってくる。そうして私がいちば
ん感動したことは、こんなにも空気の違う店々なのに、そろって同
じにおい、同じ空気、同じ時間の流れかたをしている、ということ
だった。その点で言えば、神保町の古本屋もポカラの古本屋もまっ
たく同じなのである。まさしく、そこで扱っているものは「本」と
いう物質ではないからなのだろう。
古本屋が扱う目には見えないものが、あの独特のにおいや空気を醸
し出しているんだろう。その目に見えないものは、言葉より通貨よ
りもっと強く、きっと世界共通なのである。笑うとか、食べるとか
みたいに。


■角田光代■
1967年神奈川県生まれ。作家。90年「幸福な遊戯」でデビュー以来、
『まどろむ夜のUFO』(野間文芸新人賞)、『ぼくはきみのおに
いさん』(坪田譲治文学賞)、『空中庭園』(婦人公論文芸賞)、
『対岸の彼女』(第132回直木賞)など受賞多数。
紀行文やエッセイも人気。「本がなくなり、電子媒体だけになるま
えに死んでしまいたい」と語るほどの本好き。

■『古本道場』■
著者 角田光代・岡崎武志
ポプラ社刊
サイズ:13.5cm x 19.5cm
ページ数:240ページ
定価:1,470円 (本体: 1,400円)
ISBN:4-591-08627-5
好評発売中!
他詳細は、ポプラ社ホームページにて!
○ポプラ社
http://www.poplar.co.jp/index.html
○ポプラビーチ
http://www.webpoplar.com/

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■平成17年度 明治古典会七夕古書大入札会■
作家の自筆原稿、初版本から映画ポスターまで二千点を超える!!

最も歴史ある古書のオークション

毎年恒例の明治古典会七夕古書大入札会が東京古書会館にて開催さ
れます。
本オークションは、普段は資格を持つ業者しか出入りができない東
京古書会館の市会場に、一般の方もご入場いただける限られた機会
です。

昨年は奈良時代から現代までの書籍、書簡、原稿などをはじめ、戦
後の少年雑誌や映画ポスターまで、2,000点を超える(昨年2,862点)
文化資料が一堂に会します。
今年も、由利公正起草・福岡孝弟加筆訂正「五箇条の御誓文起草稿
巻」、夏目漱石草稿「京に着ける夕」など2,700点を超える文化資
料が一堂に会します。

なお、目録掲載品がカラー写真でもご覧になれます。
詳細はこちらまで ---> http://www.kosho.ne.jp/~meiko/

【日時】
  下見展観日(一般の方もご入場出来ます):
   8日(金)10:00〜18:00
   9日(土)10:00〜18:00

  入札会(業者のみ)
   10日(日)

場所:東京古書会館(東京都千代田区神田小川町3-22)
主催:東京都古書籍商業協同組合内 明治古典会
お問い合わせ先: meiko@kosho.ne.jp
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■探求書コーナー再開のお知らせ■

2005年3月より一時お休みさせていただいておりました日本の古本屋の
「探求書コーナー」が6月9日(木)よりご利用いただけるようになり
ました。

古書検索で探してみたけど、見つからなかった。そんな時はこちらの
コーナーをご利用下さい。「日本の古本屋」参加古書店にご登録いた
だいた情報を配信します。

日本の古本屋トップページにある「探求書コーナー」よりご利用下さい。

 ○日本の古本屋
 └http://www.kosho.or.jp/

*メールでの探求書の受付は行っておりません。

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■「古本屋が書いた本」展目録■

2005年4月21日から4月24日まで東京古書会館にて行われました「古本
屋が書いた本」展に合わせて目録を発行いたしました。
http://www.kosho.ne.jp/event/chosaku.htm

B5判、52ページ、700点以上もの著作を掲載。
1部500円(+送料210円)。

まだ残部がございますので、ご希望の方は、合計710円分(本代500円
+送料210円)の切手を同封のうえ、【郵便番号】【住所】【氏名】
【電話番号】を明記のうえ郵便にて下記までお申し込み下さい。


【お申し込み先】
  101-0052
  東京都千代田区神田小川町3-22
  東京古書組合・広報部 

まで。
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■日本の古本屋 即売展情報■
7月〜9月の即売展情報。
 └http://www.kosho.or.jp/servlet/sokubai.ksB001

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日本の古本屋バックナンバーは以下のURLからご覧いただけます。
見逃したメールマガジンはここからチェック!
 ○【バックナンバーコーナー】
 └http://www.kosho.ne.jp/melma/
次回は2005年7月下旬頃発行。
お楽しみに!
。.:*゜・☆*゜本を売るときは、全古書連加盟の古書店で。☆*.:*゜*
     *全古書連は全国古書籍商組合連合会の略称です。
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日本の古本屋メールマガジンその28 2005.6.24
【発行】東京都古書籍商業協同組合:広報部・事業部・TKI
     東京都千代田区神田小川町3ー22 東京古書会館
     E-Mail melma@kosho.ne.jp(メールマガジン専用)
     URL http://www.kosho.or.jp/
【発行者】
広報部:中野照司 藤原栄志郎
事業部:田中隆志
TKI:岩森正文
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