日本の古本屋


日本の古本屋メールマガジン

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     。.☆.:* その65・3月25日号 *:.☆. 。
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☆INDEX☆
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 1. 自著を語る その30『足穂拾遺物語』
 2. イベントのお知らせ
 3. 日本の古本屋即売展情報

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インターネット「日本の古本屋」をご利用いただきましてありがと
うございます。新しい季節を迎え、全古書連加盟の古書店ではデザ
インを一新した「古書買入」のポスター
http://www.kosho.ne.jp/melma/images/2008poster.jpg
を貼りだしております。ご蔵書の整理の際にはどうぞお近くの全古
書連加盟店にご相談下さい。
昨年、古書即売会に稲垣足穂が関西学院在学中に執筆した学友会誌
が姿を現し話題となりました。それも含めて、これまで知られてこ
なかった足穂の逸文を丁寧に蒐集した『足穂拾遺物語』(青土社)
が刊行となりました。今月の「自著を語る」はこの本の編集を担当
された郡淳一郎さんにお願いしました。

 

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■足穂拾遺物語
The Uncollected Writings of Inaguaqui Taroupho■

郡 淳一郎

 稲垣足穂が初出誌紙に発表したまま忘れ去られ、これまで存在が
未確認だった101+2篇を初めて書物に編むことの重責に苦しみ
続けた仕事だった。この30年間に出版された数多のチンケな書籍・
ムック・文庫本のおかげで足穂本は極限までインフレ化し、チャラ
チャラしたキャラクター商品に貶められてしまった。判ったことに
され切り、高を括られ切った稲垣足穂を甦らせ、もう一度貴重な存
在にするために、何が何でもカッコイイ本を作らなければならなか
った。伊達得夫・北川幸比古の『ヰタ・マキニカリス』『全集』、
川仁宏・萩原幸子の『大全』、高橋康雄・まりのるうにいの『多留
保集』等々の、世界秘密を封じ込めた魔法書のような、ミュータン
トかフリークスのような異形さとどのようにか釣り合う本にしたか
った。願わくは今日までの足穂本の歴史を締め括り、仕切り直し、
再起動したかった。

 僕らがこの本を作ることは他人に作らせないということで、この
ように作ることは他のすべての可能性を殺すことだから、僕らのや
り方は間違っていないか、本当にこれでよいのかと自問自答し続け
た。ダサい本を作ったら足穂の「死後の生活」の息の根が止まって
しまうと怯え続け、自分にとっていちばん大切なものを自分はこん
なに粗雑にしか扱えないという屈辱、触れたものすべてを泥に変え
てしまうこの手を離した方が本、足穂さん、スタッフ、協力者の誰
にとっても幸いだという苦痛に、鉄棒にぶら下がっている指から力
が抜けるように何度も手が離れかけ、でも手放せなかった。ここで
も逃げたら今度こそ本当に、もう本の世界に戻れない。自分には本
しかないのだ。

 高橋信行が10年がかりで初出誌を蒐集し、解題を調べられるだ
け調べ、考えられるだけ考え、書けるだけ書き、直せるだけ直し、
萩原玲子がマイクロフィッシュの潰れきった正字正かな総ルビの原
本から入力し、高橋孝次が先の見えない垂直の絶壁を一字ずつ攀じ
登るように校訂し、木村カナがいつまでも増殖し変容し続けるゲラ
の赤字をその度に校正し、前田年昭がQuarkのバグや拡張新字体を
総当たりで手で拾い、羽良多平吉が『遊 抱影・足穂追悼増刊』以
来の総決算としてデザインした、それぞれの仕事を無にするわけに
いかなかった。自分が企画だけ通して版元を退社してしまって以後、
皆、すべての経費を持ち出しでこの仕事に取り組んでいるのだ。会
社というバック、経済という受け皿なしに、志と信頼関係だけで本
が作れるかという苛酷な人体実験をスタッフ全員に強いている思い
だった。筑摩版『全集』を収録作品・編集方針の両面から批判的に
継承しようとする本に数々の資料を提供し序文を寄せて下さった萩
原幸子さん、素直に単著として作れば本体4800円×初刷150
0部の一割をお支払いできる印税をその半分以下に削減する複雑な
構成を快諾し、足穂さんが遠距離恋愛中の志代さんに送った写真を
初めて公開して下さった稲垣都さんの御厚意にも報いたかった。

 そもそも一編集者風情に、このように仕事を抱え込み、延々と停
滞させ、そのことを思い悩む資格があるかと恐れ続けた。映画にお
けるゴダールやMADムービー、音楽におけるサンプリングやリミ
ックスに遥かに先駆けて文学に編集を導入した足穂さんの本は編集
で作っていい、作るべきだと信じていたけれども、その編集を到底
一人で担いきれず、諸要素をスタッフ全員に手当たり次第に分散し
て背負わせ、その成果を収奪することを繰り返す他なかった。僕ら
は世にも人にも魁けてバンドワークとして本を作っているのだ、楽
曲とアレンジと演奏とレコーディングとミキシングがジャストの地
点を一緒に探求して実現しよう、映画のエンドロールやCDのライ
ナーのようにスタッフ全員がクレジットされない知恵遅れで民度低
すぎの出版をこの仕事でようやく他メディアに追い付かせるのだ、
金より大事なものがあることをリスク管理に汲々として現実を縮減
し続ける会社員(とその志望者)どもに見せつけてやろうぜ、そう
自分とスタッフに言い聞かせ続けるしかなかった。無理をしたし、
させた。その度に、自らの仕事の掛け替えない稀少さと重要さを正
当に信じて書き続け、編集し続けた足穂さんの孤独と剛毅に思いが
帰っていった。

 最高のチームが組めたと思う。意識できるだけの文脈はここに集
約した。足穂という場で全ては緊密にリンクした。一匹狼だか、狂
犬だか、はぐれパンダだか、社会やら世間やらと相容れず協調性ゼ
ロのデイドリーム・ビリーヴァーでロータス・イーターで片端者た
ちが、各自の抜きん出た特殊技能と各々これだけは死守したい出版
への希望を持ち寄って、この本を作った。稲垣足穂の本の歴史は彼
に夢を託した人々の歴史でもなかったか。そして足穂を心から敬愛
する読者にとって、この本はけして上手くゆかない人生を凌いで行
くための杖になるのだから、いい加減なことはできない。ガーリー
でチープな生活雑貨とおやじのシブいホビーに書物が落ち込んでい
る季節に、キリッとしたボーイッシュな本を作りたかった。足穂さ
んの本なのだから飽くまでオシャレで、アート系で、アグレッシヴ
で、冒険的で、徹底的に作りたかった。ネット、ワープロ、パソコ
ン環境で出来たフワフワ、ドロドロと流動し続けるデータをどうし
たら決定的な一冊の書物に凝固させられるか。ネットが踏襲し拡張
した編集という機能を書物に奪い返したかった。一歩も引けない。
ここで日和ったら、かつて素晴らしかった足穂さんの本と編集と出
版の歴史がグズグズに後退してしまう。少しでも先に進まなければ、
いま出版をやってる意味がない。

 全員が人生のある時間を投入してしまった労苦の固まりを、だか
らこそ軽やかに手放したかった。なんとか筋を通せただろうか。か
ろうじてフェアネスを貫けただろうか。懐かしさと新しさと驚きと
に満ちた、トランプの一枚のカードのように天地無用でリヴァーシ
ブルで裏のある、書物という薄板界の凝縮力をもう一度告知する、
挫折と絶望を何重にも折り込んで鍛え上げた夢のような、中学生男
子の朝起ちのように鋭く硬く緊張した本にできただろうか。判らな
い。でも、僕らはこのように『足穂拾遺物語』(言うまでもなく、
足穂を拾遺する物語の意だ)を作った。このようにしか作れなかっ
た。僕らの仕事の全部はページに印刷してある。


□□足穂拾遺物語
     The Uncollected Writings of Inaguaqui Taroupho□□

著者:稲垣足穂 著作権継承者:稲垣都
編者:高橋信行 校訂+編集協力:高橋孝次 序文:萩原幸子
解題:高橋信行・高橋孝次・小野高裕・大崎啓造・金光寛峯
入力:萩原玲子 校正:木村カナ 組版校正:前田年昭
書容設計:羽良多平吉

発行:青土社
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%C2%AD%CA%E6%BD%A6%B0%E4%CA%AA%B8%EC
   2008年3月発行
定価:5,040円(本体:4,800円)
ISBN:978-4-7917-6341-2
判型:四六判
頁数:456頁

◇◆郡 淳一郎(こおり・じゅんいちろう)◆◇

オルタナ編集者、近畿大学四谷アート・ステュディウム講師。
http://artstudium.org/kouza_workshop.htm#hensyu
1966年、名古屋市生まれ。編集書に、
稲垣足穂『足穂映画論 The Cinematic Writings of Taruho
Inagaki』(フィルムアート社)、
堀潤之訳注『ゴダール 映画史 テクスト』(愛育社)、
松本圭二『詩篇アマータイム』(思潮社)、
矢川澄子『いづくへか』(筑摩書房)、
鈴木一誌ほか編『知恵蔵裁判全記録』、
吉田アミ『文化系女子叢書1 サマースプリング』(以上、太田出版)、
武村知子『日蝕狩り ブリクサ・バーゲルト飛廻双六』
『ユリイカ臨時増刊 総特集稲垣足穂』(以上、青土社)など。

 

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◇神保町さくらみちフェスティバル◇
◆   〜春の古本まつり〜    ◆
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恒例の”千代田さくらまつり”に併せて開催される神保町さくらみち
フェスティバル。今年も神保町古書店街をあげて春の廉価古本ワゴン
セールを開催いたします。神保町一丁目〜二丁目の舗道に賑々しくワ
ゴンが立ち並びます。古本屋だけでなく、新刊書店、飲食店、小物店
も出店いたします。九段の桜をお花見がてら、ぜひお運び下さい!

日にち:3月28日(金)−3月30日(日)
時間 :午前11時〜午後6時(雨天中止)
会場 :神田神保町古書店街 じんぼうエリア

併催イベント
◆DOCUMENTARY 和本 −WAHON− 無料上映会
 日にち:3月30日(日)
 時間 :開場午後1時 上映午後1時30分〜
 会場 :東京古書会館 地下ホール[千代田区神田小川町3−22] 
     入場無料 上映時間約90分

◆トークイベント「乱歩は和本のコレクター!?」
 日にち:3月30日(日)
 時間 :午後3時20分〜
 出演 :平井憲太郎氏・・・江戸川乱歩氏ご令孫
     渡辺憲司氏 ・・・立教大学文学部教授
 会場 :東京古書会館 地下ホール[千代田区神田小川町3−22]
     入場無料 約40分

詳しくは下記サイトをご覧下さい。
http://jimbou.info/news/sakura_2008.html

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◇  春の短期講座 和本入門   ◇
◆〜千年生きる書物・江戸の本屋〜◆
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和本とは、有史以来明治初期まで日本で作成された書物全体をいい
ます。この1200年で日本人の書物観が醸成されました。それは
書物を長く保存し、伝える工夫と努力をした歴史でもあります。
講座では、実物の和本を見ながら、和本の様式や装丁から読者の様
相までを幅広く知ることで、日本人と書物の深い関係を理解してい
きます。

日にち:4月9日、4月23日、5月14日 水曜日 全3回
時間 :午後3時30分〜午後5時30分
会場 :NHK文化センター
講師 :橋口侯之介氏(神田 誠心堂書店店主)
受講料:会員8,505円 一般10,080円

詳しくは下記サイトをご覧下さい。
http://www.nhk-cul.co.jp/school/aoyama/

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◇古文書塾てらこや特別講座(短期)◇
◆ 〜古書店主取って置きの話〜   ◆
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表に立つことをあまりお好みでない三人の古書店主に敢えてお出で
頂き、日頃の薀蓄をお話いただきます。古書店には立ち寄るけれど、
店主にはどうも声を掛けにくい、本当は聞いてみたいことがあるの
だが−、こんなお気持ちの方は、古書店を身近に感じていただける
のではないでしょうか。

日にち:4月14・28日、5月19日、6月2・16日
    月曜日 全5回
時間 :午後7時〜午後8時30分
会場 :小学館アカデミー神保町校
講師 :纐纈公夫氏 (神田 大屋書房店主)
    橋口侯之介氏(神田 誠心堂書店店主)
    山本實氏  (神田 山本書店店主)
受講料:13,650円

詳しくは下記サイトをご覧下さい。
http://www.komonjo.jp

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◇    古書の見極め      ◇
◆  〜神保町古書店探訪〜    ◆
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日本最大の古書オークション「明治古典会七夕大入札会」を前に開
かれる下見会を、専門家の案内で歩きます。古書の価値の見極め方
やお店の選び方、また世界からも注目される神保町のこれからを解
説します。

日にち:7月5日(土)
時間 :午前10時30分〜午後12時30分
講師 :中野智之氏(神田 中野書店)
お問い合わせ先:NHK文化センター
        青山教室 03−3475−1151
        さいたまアリーナ教室 048−600−0091

━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━━

3月〜6月の即売展情報
http://www.kosho.or.jp/servlet/sokubai.ksB001


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  次回は2008年4月下旬頃発行です。お楽しみに!
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日本の古本屋メールマガジンその65 2008.3.25

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【発行者】
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