「古本屋が作った神保町案内第2弾、
神保町公式ガイド Vol.2 好評発売中です。」

かげろう文庫 佐藤 龍


 僕が神保町に初めて訪れたのは確か高校一年生のとき、今僕が41なので25年程前でしょうか。父から「神保町に行けば見つからない本は無い。」と言われて、興味本位で行ってみたのが最初でした。正直あまり印象に残っていたり、その書店の多さに驚いたりした覚えは無いのですが、何となくこの街が気に入り、その後すずらん通りの裏手にある出版取次でアルバイトをしたりしていました。そしてじわじわと、ゆっくりとこの街の魅力や面白さを感じはじめるようになりました。

お昼は定番の「いもや」や明治大学の子弟食堂によく行きました。古書店の均一台や古書会館の2階(現在は地下1階)でおこなわれてる古書展ものぞくようになり、その当時をとても懐かしく思っています。 例えば、ある食堂で友人ととおしゃべりをしながら昼食を食べていたら、「しゃべっていないで、早く食べろ」怒鳴られたり、古書店で平積みになっている本の下の方の本を見ようとしたら、勝手に本を触るなという事で店員に突き飛ばされたりしました。他にも古本屋ではとある作家の全集を購入して、発送をお願いしたところ、発送はやっていないので持って帰れ、と言われました。あまりにも重いので帰りの電車の中で腕がつり、泣きたい気分になったのを思い出します。

 もちろん楽しい想いでやおかしな出来事も沢山あったのですが、神保町の魅力を伝えたいと思うとき、どこそこで、こんな風に怒られた等というエピソードをいつも話してしまいます。 思うに神保町はマニアな街だから、と考えています。今ではすっかりあか抜けた感が有りますが、お隣の秋葉原も同じ匂いがしました。(現在は電気街とは別の方向でマニア化していますけど。) 現在、神保町には約160店の古書店と20店の新刊書店、出版社の数は小さなものを含めると数え切れません。しかもそれぞれが専門店化していますので、一定の仁義やルールが存在したりします。それを知らずに古書店に飛び込んでみると、何か訳のわからないままに不快な思いをします。

 少しでも探している本が見つかるように、楽しくてゆったりした時間を神保町で過ごしてもらいたいという思いから、昨年より神保町のガイドブックを発行しています。 神保町の案内書は以前から各出版社が定期的に発行されていたのですが、僕から見るとあまり満足のいくものはありませんでした。その一番の理由は先に挙げた神保町のお店のネガティブな面が紹介されていない事でした。第三者からの取材ですとどうしても記事は美辞麗句になりがちです。また専門店化された小さな古書店や事務所営業店はほとんど紹介される事もありませんでした。 そんな小さなお店や古書店主たちの素の姿を見せたい、と考えたときガイドブックは自分たち古書店主たちで作るしかないと発行を決めました。 第2弾となる今号もお店の紹介は古書店主自らが筆をとり、普段は見るこの出来ないちょっとおかしなポーズのポートレート写真入です。

文章は少々上から目線だったりもしますが、それも味だと感じて頂ければ幸いです。 加えて今号の特集は「私の一冊」、略してワタイチ。古書店主はもちろん新刊書店や飲食店の店員さんたちまで本の街で働く人々のお気に入りの一冊を紹介していきます。それ以外にもスポーツ店や楽器店、食べ処や喫茶店の案内と街歩きが楽しくなるような本をめざして作りました。

 実を言うと近年は古書店の親父も、飲み屋の大将も横柄な人は随分と減って、入りづらいようなお店も少なくなってしまったように思います。でもまだまだ神保町居には敷居の高い書店、いつ営業しているかわからない飲食店などがあります。ぜひこの街を歩いて確かめてみて下さい。

神保町公式ガイド Vol.2  9月15日発売
http://www.navi-bura.com/special/jimboucho_guide.html 


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