中央線支部 支部長の書店巡り
中央線支部
支部長の書店巡り vol.14

まつおか書房 八王子市東町10-12 TEL:042-646-6310
JR八王子駅北口に出て、あきる野方面に向かって5分ほど歩きローソンの手前を左折すると小路を挟んで左右にまつおか書房の店舗がある。ここから車で約10分の所に通販部があり倉庫ともなっている。初代の松岡建治さんが3年前に亡くなり、お嬢さんと結婚した青木耕史さんが2代目として夫婦で店の切り盛りをしている。
80年代から90年代にかけて八王子の山には都心の大学が引っ越してきたのでさぞや学生が多いだろうと思っていたのに時間帯にもよるだろうがそれほどのこともなく、いまはまた都心回帰の傾向にあるらしい。まつおか書房を囲むようにパチンコ店が3軒、飲み屋も多く学生は酒は飲むが本は買わない。向かい合う2店の一方はパチンコや飲み屋帰りの客を相手にまんが、サブカル、アダルトものを並べて夜11時まで営業、片方は先代の思いが入ったかたい本を並べて早めに店を閉める。
駅から近いから売上が上がるというものではない。若者達は山の上へ、近日イオン ・モールが市内のはずれに出来るそうだから市民は車で郊外へと、いよいよドーナツ現象が顕著になるだろう。かたい方の店で取材したが、本を買っていったのは幾人かの高齢者だった。こんな環境は2代目のまだ若い2人にとってかなりの重荷になってはいないだろうか。
まだまだ初々しい感じの耕史さんは元々別の仕事をしていたそうで、結婚後に本業を続けながら店のネットの仕事を手伝い、それが古書店の仕事に本腰を入れるようになってすでに10年以上経っている。かみさんの方は肝が据わっていて社交的な感じだ。地元育ちの2人は商店街との関係もよく、直ぐ近くの放射線道路で毎週のように行われる様々な催しにも積極的に参加している。
秋は特に忙しい。耕史さんは八王子を中心に多摩地域に関連する古書を集め始めている。八王子多摩関連古 書約千点を収載した「はちたまかたろぐ」第2号を発行したばかりだ。八王子 ・ 多摩地域は日本の近代化にとって重要な地点であった。西欧文明を取り入れる玄関口 ・ 横浜の後背地として、江戸から東京へ変わる時代の縁の下の力持ちとして、まだまだ多くの文書類が残っているかもしれない。その近代史の発掘に「まつおか」がこれから果たすであろう役割に期待しよう。(K)
(この記事は中央線支部報2013年10月号から)