中央線支部 支部長の書店巡り
中央線支部
支部長の書店巡り vol.15

ノースブックセンター 八王子市越野8-23 TEL:042-677-6184
先月に続いて八王子、といっても京王線の南大沢駅からさらにタクシーに乗り、野猿街道から山に向かって入った日枝神社の下に大きな倉庫がある。倉庫の前には 10台以上は止まれそうな駐車場スペース。右上の写真、大きなシャッターの右に入口があり、半間幅のドアを開けると奥は事務所となって 10人ぐらいの社員がパソコンを前にして働いている。どれほど巨大な倉庫であるか、ドアの大きさから想像できよう。組合に加入してまだ 2年も経っていないのに交換会では活動が目立っているから、最近では誰もがその名を知るようになった。
一体どんな店主が経営し、どんなことをやろうとしているのか。福井出身の社長・北野陽一郎さんは 32歳になったそうだが、まだ少年のような顔。首都大学東京で経営学を学び、大学院に行こうかと思い本を探している内にセドリをするようになって、いまの仕事につながった。古書店の許可証を取って本格的に始めたのはここ 6年ぐらいだろうか。あっという間に大きくなって、いまでは年商 1億を超えてさらに成長を続けている。
社員は 3人、あとはアルバイターで常時 20人ほどが働いている。この成功の秘密はどこにあるのか。北野さんによれば、いまのようにネット買取が一般化していないときから始めているので知名度も信頼度も高い。その上、買取金額は高めなので毎日全国から買取依頼の荷物は来るし、この大量に集まる商品を少数の人員で効率よく処理している。それを可能にしているのがホームページ制作者と一緒に開発し早くから取り入れている買取・査定システムなのだ。
新入りのアルバイターでも直ぐに使えるシステムを構築したことが急成長の秘密である。とはいえ誠実で迅速な対応で築いた客との信頼関係が基盤にある。医学、理工学、人文・社会科学の専門書に特化して、取引相手は大学教師などの専門家。当然洋書も扱う。洋書はディスプレイ業者が固定客としてあり、比較的新しい本はアマゾンで売る。アマゾンにも倉庫を持っており、やはりここでの売上比率は高い。セットものなどはヤフオクのオークションで売る。どんな価値があるのか判断に迷うものは市場に出品している。
こうして古書価格をデータベース化している。古書は現在の量と質が将来的に保証されるかどうか疑問もあり、玩具、万年筆、時計なども扱って取引量を増やしたいと意欲的だ。稀少な和本や単価の高い洋古書にも力を入れるようにしたいので市会に入って勉強をしたいとも考えている。インターネットの申し子のような北野さんも、これまでがむしゃらに働いてきた現場から少し距離を置いて、いまは大局的な視点から事業全体の将来像を描きつつ、少し軌道修正を考えているように思われた。(K)
(この記事は中央線支部報2013年11月号から)