中央線支部 支部長の書店巡り
中央線支部
支部長の書店巡り vol.18

古本・海ねこ 調布市小島町 1-5-3 MTビル TEL:0422-32-6693
2年前に開設した《事務所》に加藤 (場生松 )友子さんを訪ねた。事務所であるとともに倉庫でもあり、店舗でもある。調布駅北口から徒歩で5,6分の距離だが人通りはあまり多くはない。いまはまだ試験的に週2回、水曜と土曜日の午後開店しているそうだが、ヨーロッパの古本屋にはよくある "open on appointment"システムで、あらかじめ予約を取れば店を開けてくれる。
友子さんは学生時代から20年以上も、フリーの編集者・ライターとして仕事を続けてきた。いまは絵本・児童書を中心に古本を扱っているが、編集者時代にはさまざまな分野の本をつくっていて、特に絵本の制作を専門としたわけではなかった。仕事の傍ら趣味で絵本を集めていた。インターネットの仕事で本の紹介をしていたときに本がどんどんたまり、これを処分するために Amazon Marketplaceに出品してみたら面白いように売れた。
これなら自分のHPを起ち上げて、そこで売ればいい商売になるじゃないかと思ったのが、本屋になるきっかけとなった。2003年のことだ。組合に加入したのは2005年である。目録での売れ筋は絵本よりも、絵入りの雑誌。子供の頃に読んだ雑誌がなつかしくて、もう一度読んでみたいという人が多いのか。「科学」とか「学習」、「キンダーブック」などがよく売れる。店舗のない海ねことしてはホームページや「日本の古本屋」でも売っているが、なんと言っても自社目録での売上が一番大きい。2009年の夏に第 1号を刊行し、2014年3月に第7号を出版した。
B5判 80頁のこの春潮号には約500点の在庫品が紹介されており、その図版すべてがカラーという豪華なものだ。ネッ
ト販売では固定客を確保するのが難しく、友子さんは目録にこだわる。初めの頃は1200部もつくったそうだが、いまは500部を配布している。高価な品物が並んでいるなと思うけれど、何でも安く売ればいいというのはよくないと考えている。
古書店が本の価値を見出し、正当な値付けをして客に渡すようにしなければ、本が生き延びていくのは難しい。加藤さんの目録では、雑誌1冊ごとにその内容の詳細が筆者、画家、判型、頁数、当時の定価、状態が書かれてあり、書誌学的にも大変に貴重な資料になっている。固定客も買い取り依頼も増えてきた。(K)
(この記事は中央線支部報2014年3月号から)