中央線支部 支部長の書店巡り

中央線支部
支部長の書店巡り vol.3



株式会社浩仁堂
武蔵野市境1-17-6-106  TEL:042-255-1533
http://www.kojindo.jp/

 すっかり立派になった武蔵境駅北口から徒歩5分、武蔵境通りに面したマンションの1 階に浩仁堂はあった。一見何の変哲もない本屋のようだが、中に入って驚いた。入口右の半間幅の細長いスペースの両側に書棚が並んでいる。ところがその書棚の裏側には広い作業場があって男女10人ほどが黙々と働いている。挨拶をすると皆さん立ち上がって、明るい声の挨拶が返ってくる。

実は株式会社浩仁堂社長の直志浩仁氏の前歴は精神障害者施設作業所の所長だ。ここは古本屋浩仁堂であると同時にカバーヌという障害者就労支援施設でもあるのだった。主にアマゾンを使ったインターネットで古書を販売しているのだが、買取り、査定、クリー ニング、出品、受注、梱包、発送、在庫管理、チラシのポスティングなど一連の作業は統合失調症や発達障害の人たちが処理する。これは 障害者就労支援施設のトレーニング ・ メニューだとのこと。チラシには「障害者支援のために本をお売り下さい」とある。あくまでも障害 者雇用を前面に出したネット古本屋なのだ。直接雇用する障害者には給料を、施設利用者には作業工賃を支払う。一方で行政側からは障害者自立トレーニングの場を提供することにより給付を受け取る仕組みになっている。15年働いた福祉作業所の現場を知り、福祉行政の実情に通じているからこそ生まれたアイデアなのだろう。

2008年にアパートの1室で始めたネット古本屋を翌年12月に株式会社とした直志さんの目的は「障害者を雇用することで、会社に利益をもたらし、障害者の働く力を社会にアピールし、障害者雇用を社会の中でアタリマエ のことにする」ことだ。能力の高い障害者が大勢いることをみんなに知ってもらう。その能力を発揮できる場をつくれば社会全体に活力が生まれるにちがいない。施しをするだけではする側の自己満足に終わり、される側の自立にはつながらない。そのため障害者の社会的自立を支援する長期計画を持っている。5年間は古本屋で頑張り、次の5年間は不動産、その次の5年間は金融(マイクロファイナンス)にも乗り出してみたいと夢を語る。

貧困者が自立できる社会を目指すバングラデシュのグラミン銀行のようなものが頭の中にはあるらしい。現在ネットでの注文は毎日40件ほどあるという。買取価格はアマゾンの売上順位を基準に新古書店よりも高めに設定し、売値はネットの最低価格だ。増える在庫を回転させるために組合の市や即売会がとても役立っている。後納郵便の利用で送料も約半分になった。現在は28人の障害者に労働と訓練の場を提供し、彼らを助ける福祉スタッフも7名いるが、まだ直接の雇用者は3名だけ。将来的に50人位の障害者を「直接雇用」できるように事業を大きくしたい。拠点を増やすことも考えている。出身地徳之島は闘牛と台風の通り道で知られる。嵐には慣れている。明日も闘牛の如く突進していくことだろう。(K)

(この記事は中央線支部報2012年10月号から)


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