中央線支部 支部長の書店巡り
中央線支部
支部長の書店巡り vol.7

悠山社書店
青梅市今寺 5-13-9 マテラス青梅工業4階 Tel: 0428-32-5607
今月は東京の西端、青梅市で大規模な本屋を経営している橋本直次郎氏を訪問した。拝島で青梅線に乗り換え4駅目の小作駅から約3キロ、出迎えてくれた橋本さんの車で約10分の豊岡街道沿 いにたつ4階建ての大きな倉庫の3階と4階の計150坪のフロアには100を越える書棚がびっし りとならび、床の上にも本が重なっている。在庫は5万冊以上だという。奥の事務室では奥様とその友人2人がパソコンに向かって仕事をしていた。新刊本を10年ぐらいやった後、40歳頃福生で店舗を借りて古本屋を始めた。
マンガ全盛の頃で、アダルトものもよく売れた。当時は青梅線の各駅毎に町の本屋があり、郊外型の大型書店もあったがすべて消えてしまった。店舗を構えている古本屋は昭島駅前のさわやか文庫一軒になってしまった。もはや本屋という商売は、店舗を借りてまでやって成り立つものではなくなったのではないか。インターネットでの売買を始めたのは、まだ日本の古本屋が始まる前のこと。誠心堂の橋口さんが始めたネット販売に相乗りをしたのだが、珍しかったのかものすごく売上があった。
本の売り方には店舗、市場、目録などがあるが、目録を作る手間と経費それに手渡す数に限度があるのに比べれば、ネットの場合は不特定多数の国境を越えた無限の顧客の目に触れる可能性がある。これは素晴らしいと、店舗を畳みネット販売に切り替えた。とはいえ、即売会の面白さはそれなりにあり、いまも愛好会に出品している。若い人たちがどんどんネットに入って来るが、その人たちの大多数は市場の役割・機能を知らない。プロが集まって入札する市場は古書の付加価値について勉強する最良の場なのだということを理解して、市での入札に参加して貰いたい。市場で付いた値段はそのプロたちの経験や知識、歴史が蓄積された結果なのだと思う。市場の出来高ばかりに関心が集まるけれど、悠山社もそうなのだが、売り上げる点数は増加しても売上金額は減っている。
単価が下がっている以上、出来高が落ちるのは当たり前だろう。将来の展望もないのに興味もない仕事をやらされるサラリーマン生活に別れを告げ、大した資金も要らない古本屋になることに反対はしないが、そう簡単に儲けられる商売ではないのですよ。同期の連中にはサラリーマンが多く、時々飲むけど、既に定年となった彼らの話題は病気と年金と人生のしまい方だよ。市場で会う同年配の同業者も「そろそろ在庫を減らさなきゃ」と言うが、俺はこれからも買い続けるだろうな。年金もないしね。(K)
(この記事は中央線支部報2013年3月号から)