中央線支部 支部長の書店巡り
中央線支部
支部長の書店巡り vol.9

百年
武蔵野市吉祥寺本町 2-2-10・ 村田ビル 2F / Tel. 0422-27-6885
http://www.100hyakunen.com/
吉祥寺駅北口を出てパルコの角を右折すれば左手に東急百貨店がある。
その手前の路を左折して直ぐに百年の店舗がある。2階への上り口に<百年 OLD / NEW SELECT BOOKSHOP>と書いた小さな看 板が出ている。夜遅くまで若者で賑わう街ならではの店の対応とはいえ、平日は12時から23時、土曜は11時から23時、日曜は11時から22時で、休業日は火曜だけだからかなりきつい労働だ。店主の樽本樹廣さんは新刊本の店で働いていたが、7年前に独立して現在の店舗を開いた。
まだ34歳という若さで、話をしていると、やりたいことが次々に現れてくるのでこれをどうやっていこうかという意気込み−熱気のようなものが伝わってくる。ホームページ(www.100hyakunen.com)を見れば分かるが、街の本屋である「百年」のコンセプトはパブリック・リレーション。「本にまつわる記録と記憶を共有できる場所でありたい」ということだ。50年代のビート世代、60年安保世代、70年安保の全闘世代、その後のしらけ世代等々、若者はいつも孤独であった。樽本さんの世代もおそらくこれまで以上の不安と孤独感を抱いているのであろう。だからこそ記憶を共有する、一瞬でもホッとできる場を求める。
「百年」は店主とほぼ同じ世代の読者を対象にしてさまざまなイベントを行っている。なかでも開店当時から力を入れているのがトークイベントだ。2006年11月に<百年「と」気分>と題して桜井鈴茂x仲俣暁生のトークショウを行ったのを皮切りに、これまでに50回、最近ではほぼ毎月開催している。昨年12月には<写真と言葉>小野博x竹内万里子、<百年とお直しと写真とか>横尾香央留xホンマタカシ、<百年メガネ節「天沼メガネ節刊行記念〜自由ポンコツ党結成即解散の会〜>と3回もあった。毎回約50人は集まり、話し手、聞き手、本屋の関係が心地よく深まる。
同好の人たちはその関係を外に向かってさらに広げ、リレーションの輪はひとりでに大きくなる。展覧会やライヴも時折催すようだ。彼らが持ち込む本も多く、その本は再び同好の人たちの手に渡っていくのである。写真集、デザイン、洋書絵本とともになぜかルカーチ全集やブハーリンまで並び、看板やポスター、人形まで広いスペースでゆったりと客を待っているように見える。専門化すると店がつまらなくなるというのが店主の考え。上の写真で見るように棚は低く、側板は薄いグリーンで店内を明るくし、車の付いた書棚を移動させればイベント会場になる。ZINE( ジーン ) と呼ばれる同人誌や小出版社の本も委託販売をしている。1 冊 525 円の普通のノートが1000冊も売れたとは驚く。
いつも他業種の評判の高い店を観察して勉強しているそうで、株式会社として2人の社員を雇い、その社会保険料も負担するなど安定した経営を心がけ、売上の向上を目指して工夫を凝らすなど、日々かなりの努力を払っているという印象を受けた。(K)
(この記事は中央線支部報2013年5月号から)