中央線支部 支部長の書店巡り

中央線支部
支部長の書店巡り vol.13



千章堂書店 杉並区阿佐谷北2-13-19 TEL:03-3338-6410


 JR阿佐ヶ谷駅北口に出て正面のアーケードに入り100メートルも歩けば左側に千章堂書店がある。11時に訪問したが、店主の林高志さんが母親と一緒に開店前の準備をしていた。結婚前は岩森書店で働いていたという78歳のお母さんはまだしゃきっとしていて棚の本を並べ替えている。

高志さんは3代目だ。初代の祖父は終戦直後に近くの井草八幡や新井薬師などで本の露天売りを始めたそうだが詳しくは分からない。父親が現在の地に店舗を構えたのは昭和36年だった。高志さんは大学卒業後薬品会社に勤めて4年間病院回りの外売の仕事をしていた。2代目の父親が8年前に亡くなり、以来母親と一緒に店を守っている。48歳の高志さんは独身だから嫁さんに店番を任せるわけにはいかないし、従業員を雇うこともできない。

古書業界に入ってから15年間東京古典会の経営員からを続け、高円寺の市会でも8年間経営員をした。いま思えば、この経験があるからこそ本の扱い方や業界の仕組みを知ることができ、仕事を続ける大きな糧になっている。新しく古書業界に入ってくる人たちは必ず経営員をするようなシステムを作った方がよいのではないだろうか。

また初代、2代目が築いてきた地元の人たちとの絆があるからこそ、いま店舗だけでの売買で成り立っているのだ。3代目はあまり苦労もせずに先代の遺産で飯を食っているのかもしれない。インターネットでの売買はやっていないし、市場で仕入れることもほとんど無い。催事などでの外売りもするが店の品物を回すためで、それも月に1回ぐらいで最小限に抑えている。

店だけでの売買が理想なのだ。棚の本も父親の時代からほとんど変わっていない。店に本を売りに来る人も、買いに来る人もそれを目当てにしている以上、あまり変えることができないとのこと。それよりも母親の居場所を維持しておきたいと、親思いの息子なのだ。棚の数を増やし、色々なジャンルの本を揃えても全部並べることは不可能で、それがよいことだとも思っていない。客の要求も分散している現在では店売りの限界がある。

即売展での売上も一時のようなわけにはいかない。この情況の中でどんなことができるのか頭を悩ますことがある。そんなときには好きな酒を飲みに行く。(K)

(この記事は中央線支部報2013年9月号から)


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