中央線支部 支部長の書店巡り

中央線支部
支部長の書店巡り vol.16



岩森書店 杉並区荻窪5−21−11 TEL:03-3398-5944


 新宿から JR中央線に乗って荻窪駅ホームに電車が入る直前、左手にささま書房が見えホームに入ると岩森書店が見えてくる。荻窪駅南口を出て 1分も歩けば店の前だ。店主は岩森正文さん、58歳。

二代目である。誰もが知るように、岩森さんは組合の理事を三期務め、いまも「日本の古本屋事業部」での運営に携わっており、中央線支部の副支部長としても手腕を振るった、いわば中央線支部の顔といった存在なのだ。昨年は「中央線支部規約」づくりの委員長として規約類を短期間でまとめあげ、今回は次期支部役員選考委員会の委員長を押しつけられている。なにしろまだ若いのに、古書業界に身を置いて 38年というキャリアに加え、組合の中枢にも入って得た豊富な知識と生真面目な性格がみんなの信望を集めているものだから仕方がない。

大学生の頃に創立者である父親が亡くなり、そのまま店を引き継いで現在に至っている。正文さんによれば、敗戦後の神田神保町には露天の本屋が並んでいた。今の古書店街の向かい側、かつて神田日活があった辺り。脇村義太郎『東西書肆街考』(岩波新書、1976)に昭和22年9月現在の神田の古書店地図が『日本古書通信』(昭22年10月15日号)から転載されているが、その中に岩森書店の名が見える。

都内から露天商が姿を消したのは、露天禁止のマッカーサー指令が出た昭和25年3月末のことである。岩森書店が現在の地に店を構えたのは昭和24年のことだから先代は先を見る目があったということになる。日本の近代文学を中心に品揃えをして、中央線沿線に多く住んでいた文士たちの需要に応えていた。いまもその伝統を継いで近代文学関連の本がグラシン紙に包まれて店奥の棚にぎっしり詰まっており、初版本や著者署名本など稀少本はガラスケースに収まっている。

ただ正文さんの現在の関心は、古書全体の売り上げをどうやって伸ばすかにあり、自ら関わる「日本の古本屋」の運営にあるようだ。売れるサイ トとしての機能を拡大するためにはどうすればよいのか計画の実現に向けて努力を重ねているえらい人なのだ。いま自店の営業に力を入れる時間がないのが一番の悩みだそうだが、当分の間は難しいかもしれない。(K)

(この記事は中央線支部報2013年12月・2014年1月合併号から)


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