古書店の役目
京の古書即売会
地域を越え、古本屋のワクを越えて新しい企画を!
続「がらんどう」のこと
仕入れを調整して余暇を取る
三酔人古本屋問答
古書界を長く見つめて想う悔いのない自伝
少しの仕掛と趣向
 

地域を越え、古本屋のワクを越えて新しい企画を!

札幌・サッポロ堂書店 石原 誠

 昨年の十月M先生が一升ビンをさげて十年ぶりに来店。先生は 八十才を過ぎていた。一九八一年の独立開店の翌年くらいだったと思うが、プラットご来店。当時貧弱な品揃えだったにもかかわらず 随分お世話になった。当時バリバリの道立高校の校長。その後の 勤務先の校長室には氏の分野のコレクションがズラリと並んだ由。 今でも独自の分野が校長室の壁をうめつくした光景は想像するだけで 圧巻だが見学しそびれて悔しい。
 
先生はこの十年病気がちで当店は目録と年賀状の御送付は続け、賀状の返信は下さっていた。「私はサッポロ堂さんでほとんど本を買った。又これからも買うよ」と言って最近またよく来て下さる。今人気の先生の分野は少年時代過ごしたなつかしい土地! 最近は収集された本を基に関係テーマをまとめる事に着手。酒もタバコものまず「本を読むのが私の道楽」と! 目が少し不自由気味だけど先生ガンバッテ! 私も私の友人も応援します!
 
二〇〇七年十二月初旬32号の『北海道・シベリア文献目録 2007年版』を発行。直後にお世話になったI先生の最終講義。妻が出席してくれ、友人でお客さんのUさんも同席。「目録ありがとう、注文するよ」に対し妻は「ウチも大変だから沢山買ってネ」と答えると「まさか!?」と信じがたい顔であったというが、後日沢山の注文をいただいた。Uさんもウチが相当儲けてると勘違いをしていた一人だった……。
 
今年三月。道内のある図書館で「松浦武四郎の事跡」について講演。私の肩書は古書店主で武四郎研究者とのこと。約一ヶ月準備し、野帳↓稿本↓印刷本の複雑な過程がやっと解り用意した約30頁のレジメも好評で足りないくらいだった。20数年前学生だったK学芸員が声をかけて下さり、Uさん共々学生時から私の小さな店に通ってくれたお客さんで、今前線で活躍しているのだ。
 
今年二月、日帰りバスツアーで妻と旭山動物園に行ってきた。日本で一番小さな面積の動物園が、国内1、2位の集客数。とても興味があった施設だがその魅力は充分伝わってきた。今夏オープンする「オオカミの館」が楽しみ。
 
六月四日第17回YOSAKOIソーラン祭りが開幕。国内外330チームが参加するイベントに発展。一人の北大生のアイディアで始めた祭りは札幌全体の経済効果を考えると大変なことだ。今や「札幌雪祭り」を完全に越えた。
 
もう一つ嬉しいことは「三浦綾子記念文学館」が十周年を迎えた事。三浦さんには15年程前に個人的に親切にして頂いたが、私は“庶民の文学”として作品に強い関心を持っている。わが故郷(室蘭市)港の文学館(この程民営になった)の活動も目を見はるものがあり、民営の文学館が多くのボランティアに支えられ運営。彼女が作家として読者に多大の影響を与えた事は特筆すべきだ。
 
沖縄と並び、経済最悪の北海道で、旭山動物園、ヨサコイ祭り、三浦綾子記念館など元気に活躍しているのだ。大阪老舗・黒崎書店は『知ってもらうが一番。売ってもらうが二番。買ってもらうが三番』という標語を掲げた。私達古本屋もほとんどが家族経営で、自店だけでは何事も進まない……。道内の組合、道外の組合、皆で知恵を出し合い、この名言を参考に、時によって地域を越え、又、古本屋というワクも越えて他の職種・人々とも連繋して、新しい企画(催し)ができないものだろうかと思うこの頃である。
(2008・6・10)


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