ふらり、お店探訪

聞き手 西平守次 (球陽書房)

     聞き手 五本木広子(苔花堂書店)

青木
 こっちに来てからは、神田にはあまり行かなくなったけど、それでもたまには荷台に載るくらいの荷物をのせて、高円寺から自転車で出かけたよ。自給自足っていうか―市場に出すほどの余裕はなかったけど、品物は店と宅買いで仕入れて、支部市に少し顔を出せば何とか間に合った。もっぱら店売り専門で展覧会も市場の経営員もやらないから、組合関係の付きあいも少なくて。旅行が好きな連中とは仲が良くて、しょっちゅう色んなところへ出かけたけどね。  山歩きとか自然に触れることが好きなんだ。本当に遊んでばっかりだよ。外口さん、盛林堂の小野さん、境南堂さん、佐伯さん、雄峰堂さんなんかと一緒になってね。希望は支部を通して募ったけど、いわば有志で集まって常に十人ぐらいだったな。林さん(千章堂さん)が支部長をされていた時には、支部から補助金も出してもらって。  支部長も二期(昭和四十二、四十六・四十七)務めたけど、いや、謙遜するわけじゃないけど、全然何もしてないんだよ。今の場所に西部会館を建てたときは、外丸さん(茂雄氏・キ丸書店)や竹中さんたちが主に携わっていて、全部決まった後に呼ばれたようなものだから。前の人が大変だったんだ。遊びのリーダーにはなったけど、本屋のリーダーにはならなかったね(笑)。
青木書店 青木さん
神奈川組合の理事長も務めた相武台の青木書店(青木順三氏)さんは弟なんだよね。
青木
三兄弟の一番下。私は真ん中で一番上の兄貴は戦死しちゃったの。  ここに住んでるのは私と女房だけ。倅は最初から後を継ぐ気がないね。「古本屋なんて斜陽だ」って大学の時から言ってたよ。それで地方公務員になっちゃった。
先見の明があるねぇ(笑)。
青木
 昔は良かったよね。店を開けていればそれなりにお客さんも来てくれて、食べるには困らなかった。ま、楽な商売をやっていたと思うよ。今はとにかく暇だね。お客さんは全然来ない。時代が変わったんだろうねぇ。若い人は本を読まなくなったし、店に来ても見るだけで買わない。新聞で電子書籍の話題もよく目にするようになったし、紙の本は無くなっちゃうかもしれない。雑誌や綺麗なパンフレットなんかは残るかもしれないけど、うちがやっているようないわゆる「古本」みたいなものは見放されていくよね。専門的なものだって買う人はたかがしれてる。  だけどこんな状況なのに、新しく組合に入ってくる人はまだまだいるでしょう。感心しちゃうよ。私なんかいつ辞めようかと思ってるのに(笑)。  古本屋をやっていて良かったと思うこと?そりゃあ偉い先生と対等に話ができたり、宅買いに行って正面玄関から入れるっていうのは、多少プライドがくすぐられたかな。色々な人のところへ出かけて行って良くしてもらったけど、年上の人ばかりだったからみんな亡くなっちゃった。  昔は本屋同士でお互いの店に顔を出すこともあったけど、最近はそういうのもないでしょ。市場にも行かないから、どういう人がいるのか全然知らない。班の結びつきも強かったよね。班会にはみんな出席していた。班の範囲が広がるようになってから、段々と交流もなくなってしまったんだろうな。  時代と共に古本屋も街並みも変わっていくのは仕方ないけど、少し寂しいよね。
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