理事長がゆく

パジュ・ブック・ソリに出展 パジュ・ブック・ソリ組織委員長
金彦鎬(キム・オンホ)氏

小沼
本日はご多忙の折、お時間を割いて頂き誠にありがとうございます。始めにいつ頃からパジュ出版都市という構想を抱かれるようになったのか、お聞かせください。 キム 八十年代の後半から議論を開始したので、二十五年近く前になりますね。神保町や海外の古書店街に感動し、私たちの国にも本のユートピアを作りたいと思いました。
小沼
ヘイオンワイも参考にされましたか。
キム
九四年に訪れましたが、パジュではなくヘイリ芸術村のインスピレーションになりました。ヘイリは九五年から構想段階に入り、初めは本を中心にした芸術村を考えていましたが、色々な分野の芸術家が集まったことにより現在のような多様性を持つに至っています。
 私はかねてからソウル市内の清渓川のような書店が立ち並ぶ風景を新たに想像したいと考えていました。そのためパジュは出版社と書店が両輪となる都市にしたかったのですが、出版社に傾いてしまいましたので、ヘイリは書店を中心に組成したかったんです。ただ私は出版人であっても、建築や美術や音楽などが密接な関係を作っていける現在のヘイリのような環境を大切にすることが何より重要だと考えています。
小沼
「ブックハウス」があるのはそういった理由なのですね。  パジュの出版都市計画には五人の発起人がいたということですが、ヘイリ芸術村はどれくらいの人々が携わっているのですか。
キム
 メンバーは約三百人、そのうち住民は約半分ですが、これからも住居スペースは増える予定です。中心となったのはやはり五〜六人で、私が十年ぐらいかけて考えたアイデアを他のメンバーに伝えました。先程言ったように他分野の参加もあって初期の構想は拡大し、展示や音楽を行う複合的な空間になりました。また「ブックハウス」はハンギル社だけの出版物だけではなく、岩波ブックセンターのように他の出版社の本も展示販売しています。
小沼
六月に訪れた際にはちょうどロッテの大型ショッピングモールの着工が始まっていましたが、完成した後にはどのような環境の変化が予想されるでしょうか。
キム
大変な集客力がありますので、その中の5%でも書店に流れてくれれば良いと思っています。現在は出版に具体的な興味を持つ人にはあまり来てもらえていませんが、カフェやギャラリーといった施設が充実してくれば文化空間という意味合いをもっと強調できるでしょう。
小沼
キム社長が当初抱いていたパジュ出版都市の構想が完全に実現するまでには、あとどれぐらいの時間がかかるとお考えですか。
キム
少なくともまだ十年は必要でしょう。ただし全てが完成することは現実的にはあり得ません。プログラムは絶えず改変しますから、その都度新たな課題が生まれることになります。
 パジュのビジョンの一つとして「公園化」を掲げています。恋人達がベンチで読書を楽しみ、本について語り合うような街が理想です。神保町のような都市型ではなく、自然環境を活かした郊外型の街作りを進めていく。近くのハイキングコースには週末になると沢山の人が訪れますので、そういった人々が休息できるような機能を持たせることも必要でしょうし、レストランもこれから増やさなければなりません。
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